その王国の王様は非常に誠実で理解のある人で
国民から非常に愛されていました。
その王国は、国中が豊なブドウ畑で、
その王国に住む1万世帯の家族はワイン作りに携わっていて、
周りの国に輸出することで国民は非常に潤っていました。
そんな国の王様はもっと国民を幸せにしたいと考えていました。
国の財政を見直し、1万世帯から納めてもらっている税金を
下げることはできないか?
そんなある日王様にいいアイデアが思いつきました。
税金を排除をし、国費をまかなう唯一の献上品として
年に一度のワインの瓶詰めをする季節に、
その年にできた最上のワインを一世帯につき
1リットルずつ持ってこさせよう。
そしてそのワインを売ることによって、
王室予算、教育費などにまかなおう
そのアイデアはその年のワインの収穫の季節に実施され、
町には張り紙が貼られ、国中に知らせが広がりました。
そして国民たちは王様を褒め称え、
酒場では善き王様の健康と長寿を祝う乾杯の嵐でした。
そうして献上の日がやってきました。
宮殿の庭には専用の巨大な樽が置いてあり、そこに朝早くから
家長を先頭に1万世帯の家族全員がやってきました。
一人一人その専用の巨大な樽に、その年最高のワインを
1リットルずつ献上していきました。
日暮れに近づく頃には、最後の1リットルのワインが樽に
注ぎ込まれました。
王様は誇りに思い、感慨もひとしおでした。
王様は、国民に
「すばらしき民たちよ。皆々の王への忠誠が、
王の皆々への忠誠心と同様であったと確信できて非常に
喜びを感じておる。
このワインの記念すべき最初の1杯で皆を称えて乾杯することで
感謝の意を示したく思う。
このワインは民の愛であり、世界の最高のワインのである。」
国民の誰もが涙を流し王様に拍手喝采を送っていた。
そうして王様は、世界最高のい1杯目のワインをグラスに注ぎ、
民衆にグラスを掲げ始めた。
ところが、そのワインは無色透明、そして鼻を近づけると何の匂いも
しなかった。考える間もなく口にワインをつけるとそれも何の味も
しなかった。
その世界最高のワインは、無味無臭無色透明なのだ。
なにが起こったのか王様はわからず、早急に国から学者を集め
そのワインの成分分析をさせた。
そうするとそのワインは純粋な水、百パーセントの水であった。
王様は近くにいた大臣に近づき、
「これは奇跡か?それとも化学反応なのか?」
その王様の質問に大臣はこう答えました。
「これは奇跡でも化学反応でもございません。
王様も民も同じ人間だということです。
それがすべてでございます。」
そう大臣に言われた王様は、なんのことかわからず
もう一度大臣に尋ねた。
「それはどういうことだ?」
大臣は、ある民を例に話をしました。
「その民は、非常に広大なブドウ畑を持ち、
すばらしい腕の持ち主で国内きってのワインを生産し、
彼のワインは、一番高い値で真っ先に売れてしまいます。」
「今日の朝、自宅からワインを1リットル壷に入れて
宮殿に向かう前にある考えがうかびました。」
もしワインの代わりに水を入れたらどうなるだろう?
1万リットルのうちのワインの中に1リットルの
水がまざっていても誰も気づかないだろう?誰も!」
そう誰も気づかなかったでしょう。ただひとつのことが
起こりさえしなければ。
そうなんです。その一つのことが起こったのです。
「誰もが同じことを考えたのです。」
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